ウー・レイ
チャオ・ルースー
原題 星漢燦爛月升滄海
2回目視聴 感想後後編
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ネタバレな感想なのでご注意!
結末まで感想ネタバレしてます。
キャラクター生死を含めネタバレOKな方のみどうぞ
ワン・ジュオチョン演じる皇太子は一言で言えば善人。
人間性は悪くない。
悪辣な人間が多い皇宮で育った割には素直、優しい。
皇后そっくりな慈悲深い性格。
しかし皇太子であり将来国を背負った皇帝になると思えばその性格は……
優柔不断、理性よりも情。
臆病で、用心深さに足りず、人を疑わないので騙されやすい──と欠点だらけになる。
それらのせいで決断力にも欠けるし、不備も多くなり、廃太子の噂までたてられる。
長男だし、皇后の生んだ嫡男だし、陛下はこの長男を跡継ぎにしたいとは思っているけど、不疑も疑問に思ってる。
不疑は無用な波風は立たせたくないと思う派だけど、この皇太子では国を背負えないと思ってる。
越妃の生んだ三男は合理主義、決断力も有り頭も良い。
思ったことははっきり言う←こちらも母親そっくり
そしてそれなりの野望も持っている。
理性優先、法や忠義のためなら情などなく家族でも顧みることなく告発する←まったくもって母親と同じ
兄を陥れようとまでの腹黒さは持っていないが、兄では国が傾くという現実的な不安と不満を持っている。
この考えは不疑と同じだ。
不疑は何度となく皇太子には忠告し、釘を刺していた。
情で臣下を選び、登用すれば、無能な人間が増えるばかり。
事が立ち行かないので、よく考えるようにと。
しかし皇太子には決断力がない。
情が先立ち非常にはなれないので、政治には向かない性格。
しかも夫婦仲が良くない。
太子妃は少商を庇って良くしてくれてるみたいだったのだけれど、影では夫が昔好きだった女に異常なまでに固執して彼女を長年陥れていた。
嫉妬するなら旦那に復讐すればいいのに、すでに他の男と結婚して縁を切っているのに、夫が彼女を忘れられないからと、既に関係ない女に悪意を向けるとか……サイコパス気質だなと思う。
ちょっと普通な顔して、精神が普通じゃない。
そしてその妻をコントロール出来ないというか、気付いてもいない時点で、皇太子は優しいのではなく単なるボンクラ。
皇太子はこの時点で人を治めていく能力などゼロだとわかる。
多分不疑はこのことも陛下に伝えるために、死を覚悟して皇太子の配下を掌握し、利用し、自分の復讐を遂げた。
皇后と皇太子に情はあれど、国が傾くことは許されないから。
「死」を持って詫びると決めていたから。
これ以前に娘が大事件を起こし、皇太子である息子も大事をいくつも引き起こしてしまった。
可愛がってる不疑と少商の行く末も真っ暗。
この頃から皇后にはストレス掛かりまくりで身体を壊し、少商への心配も拍車を掛ける。
皇后は自分がすべて悪いと思ってしまう人。
少商の方は実家が陰謀に巻き込まれ、その解決に奔走する。
不疑も協力しながら途中、自分の復讐にとって大変重要な証言を手に入れる。
ここまで幾人かの関係者を見つけ糾弾してきた。
ある者は殺し、ある者は失脚し、それなりの復讐をしてきたのだがどれも黒幕ではなかった。
自分の本当の父を殺した、本当の悪人。
子供の頃に目撃してるので凌益が犯人だとわかってる。
けれど証拠と証人がいない。
やっと証人になる人間を自分の力で捕らえたら凌益に殺されてしまった。
仇討ちは諦められない。
だけど正当な方法は凌益によって握りつぶされ、方法がなくなった。
更に母(叔母)が亡くなって、仇を討ってと追い打ちを掛けられ、残る方法は実力行使しかなくなった。
法では裁く方法を握りつぶされたので自分の力で報復するしかなくなってしまった。
この真実を知っているのはもう自分ひとり。
よって、血まみれになりながら父(叔父)を殺すことに……
この義叔父は不疑の本当の両親、叔母、従兄弟、父の臣下、親族全員と領民、多くの人間の命を奪った。
敵は討てたけど……
不疑は少商との結婚までに正規の方法で追い込み、裁きを与えられると自信があったんだよね。
だから結婚と敵討ちを同時進行してきた。
けれど躓いてしまった。
少商には今までのあれこれの報復は実は不疑が自分のためにやっていたことだと知られてしまった。
多分どっちも兼ねていたとは思う。
少商への想いと仇への報復が一挙両得だったのだ。
でも黙っていたからねぇ。
これは後から言い訳したところで「私を利用したでしょ」と言われても仕方ない。
彼女は感付いてたから何度も促したのに、不疑は告白しなかった。
いつも思うのですが、夫婦や恋人は秘密を持ったら駄目なのか?
相手が自分では無い限り、すべてを共有することは無理だと私は思うのです。
相手を思いやる嘘だってあるでしょう。
隠し事もしかり。
この辺は大変難しい事だと思う。
そしてそれは互いの性格にも寄ると思う。
嘘や隠し事を絶対に許せない人というのは存在します。
後から説明されても許せない人、そういう性格の人は居る。
この二人の場合、不疑は後から説明されれば自分なりに消化して飲み込める人でしょう。
仕事がらもあって、必要な嘘は存在すると思って居たはず。
しかし少商はその手のことは絶対に許せない人間のような気がする。
なのでこの二人の場合は少商に隠し事をしたのは致命的になる。
それでも不疑が告白できなかったというのであれば、その後それが理由で破局しても仕方ない二人だと思うのです。
そして実際にそうだった。
しかも、取り残されたのは絶対に許せない出来事だったでしょう。
本来はあの雨の中……そして母親が死んだ時点で少商には自分の顛末を告白するべきだった。
崖落ちで取り残されたとしても、せめて本人から全て明かされたあとなら少商も不疑の胸中を思いやることが出来たはず。
でもアレもコレも隠されたあとでは、今さら全てを受け入れたり呑み込んだりすることは不可能だったでしょうね。
少商が望んだことは生きるも死ぬも一緒であること。
不疑を信じて自分の全てを預けたのだから最後まで全てを受け止めてほしかった。
自分を置いていくなど最低の行為だったでしょう。
理想の二人というのは互いに同じ速度で同じ歩調で隣で歩んでいくことでしょう。
一見簡単なことのようで居て、これを出来る二人がどれだけ居るでしょう。
どちらかが佇んだり遅れたり、気持ちがせいて早足になることもあるかも知れない。
疲れて座り込むこともあるかも知れない。
常に隣に気を配り神経を集中していればいいのか?
しかしそんなことは可能ですか?
少しの余所見も許されなくなる。
そんな時、相手を振り返ったり励ましたり、手を差し伸べる。
そんな心遣いが出来る、どれだけ相手を思いやり広い心で受け入れる、許せる、その心の余裕が二人が手を取り長く歩いて行ける秘訣なのかも知れません。
少商と不疑は歩き始めて数歩で足並みが縺れてしまったのですね。
転んだ相手を支えられるのか、待てるのか、許せるのか。
そういう気持ちがすれ違うか、寄り添えあえるのか、そこが分かれ道なのだと思います。
また、離れてしまっても、時間が経っても、やり直せるところまで戻れるならそれでいいのではないでしょうか。
最後の二話が二人の絆を取り戻す話なのですが、やはりなんで二話なの?と思ってしまいます。
せめてあと一話分くらいどこかで調整できたはず、駆け足過ぎだと思います(笑)
この二人は夜空も含め、二人で良く空を見上げていました。
タイトルにちなんでいたのかも知れませんが、私は理想の二人は見つめ合うことではなく二人で同じものを見つめることだと思います。
同じものを見つめていればやり方が違っても同じ場所にはたどり着けます。
たどり着けるまで、相手を信じられるか、待てるか、手を取り合えるか、そういう問題だと思うのですよね。
最後の星を見つめる二人や家族の姿はそういうことを象徴してると思うのです。